元旦二日目、帰省したは良いものの、特にやる事がないので独りぶらり旅。
実家で佐賀市内の地図を眺めていると、徒歩で行けそうな場所に行った事の無い神社を見付けたので、脳内に地図を焼き付けて玄関を出る。僕はスマホの様な便利な道具は持っていないし地図を持ち歩くのも面倒臭いので、記憶と感覚を頼りに目的地を目指す。
良さげな廃墟。
目的地は長崎街道から少し南に逸れた場所に在り、護国神社を抜け、伊勢神社から街道沿いに西を目指す。街道はとても狭く、歴史を感じさせる家屋が並んでいるが、さすがに限界を迎えている様だ。
地蔵
地蔵院
暫く歩いていると、急に視界が開ける。
ここから川沿いに下って行く。
歩き続けること約二時間、漸く目的の神社に到着...かと思ったら違った。このお寺の裏に神社は在る。
目的地。
正月なのに人気がない。お供え物が前日の暴風で散乱していた。独り初詣を行う。
折角二時間かけてやって来たんだから何か面白げなものは無いかと境内をうろうろしていたら、本殿の床下に何かを発見。
覗き込んでみると、朽ちかけた木造が...。先代の御神体だろうか？
横から見た図。
帰り、近くにもう一軒神社を発見するが...
屋根が崩れている。中を覗いてみたが、既に引っ越したご様子。何処へ行ったやら。
このあと、二時間かけて来た道を戻る。行きは順調だったんだが帰りはかなりしんどかった。こういう時、自分が障害者である事を再認識する。まあ往復四時間は健常者でもきついと思うけど。途中、映画館を改装したカフェで糖分を補給する。その前にトイレで立ち寄った某百貨店は初売りだというのに閑散としていた。皆何処へ行ってしまったのだろう。
古書収集家／グスタボ・ファベロン＝パトリアウ／高野雅司 訳
ペルーの作家に依る2010年作。大体正月に帰省する際は本を一冊、暇潰しに携行している。タイトルとマーブリング調の装丁に惹かれ、内容を碌に確認せずに購入。自分好みの奇妙でシュールな物語かと勝手に思っていたが、読み進めて行くうちにミステリだという事に途中で気付く。婚約者を殺害して精神病院に収容されたダニエルと面会した旧友の「私」が、ダニエルの何処までが真実なのか良く分からない証言と、彼と同じ組織のメンバーの回りくどい話を聴いて行くにつれ、事件の真相が明らかにされて...と云う、概要だけ説明すると、とてもありきたりなミステリ。なんだミステリかぁ、と少々落胆しつつも貧乏性な性格の故、折角買ったのだからと最後まで読んでしまった。見所は無数の精神病患者や偏執的組織の面々、残酷描写と所々に挟まれる奇怪な逸話、内面に潜む狂気といった所だろうか。個人的には精神病患者や残酷描写には慣れっこなので特に何とも思わなかったけれど、人に拠っては嫌悪感を催してしまうかもしれない。それからペルーの政治が不安定で暴力的だった1980年代の著者の実体験も物語に反映されているそうな。
僕は子供の頃から無意識に独り言を呟いている事が多々あり、よくそれで周囲の人間に訝しがられたり嘲られたりしている。帰省中もいつの間にか「独り言モード」に入っていて、母に「貴方はさっきから何を話しているの？」と何度も突っ込まれたが、その様な状態について、ダニエルが婚約者に説明する描写があるのだが、それが割と的を射ているので引用する。
「過去あるいは未来の出来事、物語の架空の舞台、夢、日常的に投げ出してしまっても、成し遂げられないことに対する後ろめたさのなかで存在している計画。すべては、この世界と同じくらい真実性のある世界だし、僕はそれらを手放したり、その価値を落すようなことはしていない。もちろん、多くの空間に同時に生きようとするなら、この空間に居ないことがあっても許されるはずだ。そう思わないかい？」
因みに、原著の装丁は「とても分かり易い」挿画が使われていて、もしこれが翻訳版の装丁にもそのまま使われていたら、多分購入はしなかったと思う。少なくとも僕の様な人種に対しては、とても効果のある変更だった様だ。
それから、出版元の水声社は、amazonや大型書店が実施しているポイント制には反対の姿勢の様で、その旨に関する説明がなされた冊子が本に挟まれていたのだが、これを購入したジュンク堂書店ではポイント制を敷いているので何とも妙な気分である。
284頁／定価＝2800円＋税
水声社：http://www.suiseisha.net/
