今回アトリエてらたで個展をやるに伴い、どうせならてらたに因んだ展示を行ってみようかと思い立ち、テーマを「ネコとカレー」とした。そもそもの出発点は更に数年遡り、ある日てらたで知人と歓談している所に、てらたで放し飼いされているネコのポーが気紛れで膝の上に乗っかり、それをスタッフの大ちゃんが面白がって写真を撮ったのがきっかけだった。メールで送られて来た画像を見て、そのうちこれをネタに絵を描こうと思っていたんだけど、何もしないまま数年が過ぎてしまった。その後漸く作品の制作と展示を行えるだけの時間的余裕を得て、昔撮った写真を基にイメージを展開して行った。
カレーと云うテーマに伴い、唐辛子を所々に描いているけど、カレーについての文献を読むと余り重要ではなく、寧ろターメリックやクミン等の方がカレーを象徴している事が分かった(そもそも唐辛子は16世紀にならないと大陸に入って来ていない)。しかし分かり易さを優先して唐辛子を採用した。
メインの50号の作品では、キャラクターの顔が中々決まらず、何かヒントは得られないものかと好きなアーティストの作品集を引っ張り出して眺めていると、ジャガイモから芽が伸びている作品(Franciszek Starowieyski. Gombrowicz: Operetka. 1977)が目に留まり、日本式のカレーにはジャガイモがつきものなので、これを採用した(...と云うのは建前で、単にジャガイモから芽が出て伸びている様がシュールで面白かったから)。
展示の演出でマネキンやネオンを用いたのは、数年前からアパレルショップのショーウィンドウに興味を抱き、展示空間にそういった要素を加えてみたかったからで、別に来場者を驚かそうとか、そういった悪意が在った訳ではない。ガスマスクは単なる個人的趣味に因る。鏡は自前で、椅子と棚はてらたの備品を利用している。
小作品については最初の時点ではノープランで、締め切り直前に制作した。
ところで、ソープランドとノープランを掛け合わせて「ノープランド」なるものを作ってみたら面白いのではないだろうか。
当時働いていた仕事の最終日が1月30日だったので、翌31日から作業を開始する予定が、風邪を引いて2日程寝込んでしまい、保険証も無いので病院にも行けず、いきなり予定が狂う。3日目の2月2日から何とか身体は動く様になったので取り敢えずチラシだけでも作ってしまわねばと、以前の職場で昼休み中に描いた落書きを基にイラストを作製し、2月の1週目にオンラインで入校を済ませる。しかし風邪と徹夜で意識が朦朧としていたせいか、目にハイライトを入れ忘れる(原画は鉛筆で、ハイライトだけイラレで入れていた)。('A`) それからM50号のパネルの発注を行う。
この時点ではカレーに因んだ作品のアイデアが全く浮かんでおらず、もしかしたらカレーの絵は制作しない可能性もあったので、タイトルの最後に(仮)を付ける。カレーの語源であるKARIの駄洒落ではない。ただ全くカレーの要素が無いのもアレなので、苦し紛れにネコの左目を唐辛子のシルエットにする(ただ残念ながらそれに気が付いた人は居なかった様だ)。
2月2週目、Tシャツとネオンのデザインと発注を行う。意外に前職で覚えた事務的なメールのやり取りが役に立った。Tシャツはネコの目のハイライトを忘れずしっかり入れる。微妙な色味が欲しかったので白黒ではなくフルカラーにした。
プリズマ:
http://www.prismacreative.jp/
ネオンはイラレで作成した簡単な図案を送ると、翌日には概略図と見積りが送られて来た。Tシャツもネオンも割とサクサク作業が進んでいった。インターネットって便利ですな。ただネオンについては、中国に在る工場が旧正月の休みに入るとの事で、この時点では個展開始日に間に合うのかは不明だった(結果は余裕で間に合った)。注文していたパネルが届く。K氏に依頼していたタペストリーが届く。
2月3週目、発注していたチラシが届く。メインの作品の下描きを行う。資料用に自分でスーツを着てポーズをとった写真を撮る。自宅のプリンターが紙とインク切れを起こしたので近所のコンビニで出力を行う。自分が知らない間にコンビニコピー機も進化していて、スマホやUSB等に対応していた。昔は自転車漕いでキ◯コースまで一走りしていたのに、便利な時代になった物ですな。元々は全身を描く予定だったんだけど、収まりが悪いので膝から下をカットする。
2月4週目、リキテックスのヘビージェルメディウムを下地に塗る。アキーラとの相性については現時点では不明。メディウムを塗る時に、実際に絵具を塗る時と同じタッチ、手順で塗ることで、本番前の予行練習も兼ねている。メディウムが乾いた後、粗塗りを行う。メディウムの表面が滑るせいか、美味く絵具が乗らずに少し焦る。この後は特に問題無く塗布作業が行える様になったが、アキーラは完全乾燥するまでは水分で溶けてしまうので、同じ場所を筆でペタペタとやっていると下地が露出してしまう。特に僕はハードタイプの筆を使っているので余計に注意が必要。週の半ばに発注していたTシャツが届く。チラシを各人へ発送する。はがきサイズではない為、封筒に入れてクロネコメール便を利用する。メール便は3月いっぱいで廃止されたので、次回からはサイズに気をつけようと思う。
3月1週目、額縁をオンラインで発注する。現物を見ずに決めるのは中々リスキーな気もするけど、贅沢な事を言っている余裕も無く、黙々と制作を進めて行く。作業も終わりが見えてくると俄然ペースが上がり気持ちにもゆとりが生まれてくる(時間的なゆとりは無いけど)。冷蔵庫の中の食材が放置プレイ気味になる。
額縁のタカハシ:
http://www.gakubuti.net/
3月2週目、月曜にマネキンと鏡を発注する。搬入の件でてらたへ行き、ついでにカレーを注文し資料用にカメラで撮影をしているところで漸く小作品のアイデアが固まる。自宅へ戻り450mm四方のパネルを2枚発注する。パネルが到着するまでの間にメインの作品の制作を詰めて行く。水曜にパネルが到着したので下描きを行いメディウムを2層塗る。木曜にマネキンとネオンと額縁が届き、金曜に鏡が届く。土曜日、メインの作品も最後のアレンジを残すのみとなったので、息抜きも兼ねて徒歩で赤坂の画材屋へ行きパステルを買い、ついでに良さげな筆を見付けたので一緒に購入する。更に天神まで足を伸ばし、小道具を購入する。小作品①の彩色に入る。日曜に額縁の配送を手配する。
3月4週目、月曜に搬入の予定が、お互いの都合が付かずに見送られる。深夜26時に漸く小作品①の制作が終わり、息抜きも兼ねて近所の吉野家へ食事を摂りに行く。27時(3時)から小作品②の制作に取りかかり、個展開始日の火曜11時に完成する。メインの作品にパステルでアレンジを加え完成させる。修正が利かないので緊張する。昼食を軽く摂った後、やって来たてらたの車で搬入を行う。メインの作品は車に積めないので歩いて持って行く。90分遅れの16時半に会場設営が完了する。疲れ果てたので帰って寝る。その後も、マネキンの左側の壁が寂しかったので何か良さげな小道具は無いかと日中は天神界隈を歩き回り、窓枠風鏡を見付け購入。扉の色が気に入らないので黒に塗り直す。百均でラグジュアリー風な額縁を見付け、イラストの原画を入れて飾る。その他諸々調整を行い、最終的に落ち着いたのは金曜日だった。本来であれば開始日には完全な形に仕上げていないといけないんだろうけど、実際に展示してみないと気付かない点が多々在るので難しい。搬入にもっと余裕を持たせれば解決出来る話ではあるけれど。
集客数については正直芳しくはなく、食事だけして展示を見ずに出て行く客も多かった(これについては自分の力量不足)。今後アトリエてらたに展示室が在る事、無料で利用、立ち入り出来る事等の情報が広まれば、状況は少しずつ変わっていくんじゃないかと思う。
以上。(・ω・)ノ